私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 冷たい紅茶を一口啜って、マリエルがうっとりと言う。
 
「それは、私もまだ信じられないよ。お嫁さんというガラでもないし……」
 
 夢見心地でいる間に、とんとん拍子で婚約の話は進んでしまった。
 
 お互いに忙しくて、まだアレクシス殿下とはゆっくり過ごす時間が取れていないせいもあるのだろう。
 
「いや〜ほんと、ヴィオラさまが結婚するとは思わなかったっス。仕事の鬼として生きるって言ってたのに」
 
 リーネはひと通りお菓子をつまみ終えてから、思い出したように言った。
 
「それは少し、不安な点でもあるんだ。私は今後も、騎士として活躍したいからな」
 
「そうっスよ! 白百合騎士団解散なんて、イヤですからね。少なくとも、騎士としての活動をすっぱり辞める訳じゃないですよね?」
 
「ああ、もちろん辞めはしない。といっても、以前のように働き詰めというわけにはいかないけどな」
 
 結婚すれば、普通は家を守る女主人として家庭の運営を切り盛りすることになるだろう。しかし、王家ともなれば事情は少し違う。
 
 正式な婚約を交わす前に、アレクシス殿下は可能な限り私の意向を汲むと約束してくれた。
 
「そうね。剣を持ってないヴィオラだって、同じくらいピンと来ないわ」