人目を忍び、馬を駆って、早々と事件の現場に辿り着いた。
といっても、今日の昼過ぎに二人で過ごした森の中だ。
辺りはがらんと寂しく、木々がわずかな風に吹かれて揺れる音と鳥の声だけがしていた。
月と星の明るい夜で、灯りをつけなくとも襲撃のあとの焼け焦げた草原がよく見える。
よくも、殿下にとって大切な場所を——と、怒りが湧いてくる。が、今は感情的になっている場合ではない。
襲撃に使われた魔道具の残骸は、さほど苦労せずに集まった。
「これは……間違いない、あの煙幕弾ですね」
「知っているのか?」
「はい。演習で使うために、魔道具倉庫を一通り見て回りましたから。しかし後発の煙幕弾が出来たので、これは隅に追いやった記憶があります」
「なるほどな。不自然に紛失したと報告があったのは、これか」
あとは、これと同じものが公爵家から発見されれば、もはや言い逃れは出来まい。
「公爵家に、極秘で捜査命令は出してある。加えて、エルディシア公爵にはしばらく城に滞在するように促した」
公爵はてっきり、数日後には正式な婚約の申し込みがあると思っている。すこぶる上機嫌で、さっそく城の来賓室でくつろぎ始めたそうだ。
「ぬかりないですね」
「だろ?」
暗がりの中で、アレクシス殿下がニヤリと得意げに笑うのが分かる。褒めて欲しくて尻尾を振る犬のようだ。
集めた残骸は持参した紙にくるんで、巾着にていねいにしまった。
「十分な証拠が集まったら、公爵を始め全員を呼び出してその場で罪を暴く。そうすれば……正式に、公爵家との縁談は白紙になるだろう」
ただ……と、アレクシス殿下が苦い顔をする。

