私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 殿下は部屋の鍵を締めてから、声を落として話し始めた。
 
 しばらく前に、城の魔道具倉庫でちょっとしたトラブルがあったらしい。
 
 ある特定の種類の古い魔道具が、管理簿ごと全てなくなってしまったのだそうだ。
 
 それはもうしばらく使っていなかった魔道具で、投げつけると大きな音と光と共にちょっとした爆発を起こし、煙幕を発生させるアイテムだ。
 
 殺傷能力はないので、一時期は演習にもよく使われていた。しかしより新しい魔道具が開発されてからは、倉庫の奥深くにしまってあったのだが。
 
「きっと、襲撃に使われた煙幕弾ですね」
 
「その通りだ」
 
 そしてその前後で、魔道具倉庫を出入りするエルディシア家の従者が目撃されている。
 
「倉庫番の使用人たちが、噂していた。公爵家の人間は従者も横柄でいけすかないが、娘さんだけは優しくて綺麗だと」
 
 公爵家の従者は、なんらかの下見をするように倉庫を覗きに来ていたらしい。そのときに、倉庫番たちを偉そうに追い払ったのだそうだ。
 
「それだけではない。前回の襲撃事件のあと、調査チームが発足されただろう?」
 
「ええ」
 
「そのチームの動きを制限していたのも、エルディシア公爵のようなんだ」
 
 調査のためにいちいち許可証を取るように命じたり、必要な備品を公爵家で借り取ったり。調査はなにかと難航したが、その工作の裏には公爵家が関わっていた。
 
 ついさっき、セリーヌ嬢から聞いた話と繋がる。ぞわっと、気味の悪い恐怖が背筋を這った。