私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません



「ヴィオラさま……あなたは、勇敢で、誠実で、ご親切な方ですね」
 
 可愛らしく小首を傾げながら、セリーヌ嬢が噛み締めるように言う。
 
「褒めすぎですよ」
 
 もったいないお言葉ではあるが、素直に嬉しい。彼女の評価を裏切らない人になろうと思う。
 
「アレクシス殿下が、あんなにも愛しておられるずですわ」
 
「愛……ええっ!?」
 
 突然思いもよらない方向に話が飛んで、声が裏返る。一気に体温が上がって、心臓がバクバクし始めた。
 
「あの、そ、それは……」
 
 アレクシス殿下は、私を愛している。しかしなぜそれを、よりにもよってセリーヌ嬢が知って……?
 
「そんなにお慌てにならないで。殿下ご本人から、聞いてしまいましたの」
 
 顔を真っ赤にしている私に、セリーヌ嬢はくすっと笑う。
 
「二人でお会いするたびに、殿下はヴィオラさまのことをお話しになるのですよ。とても楽しそうに、まるで少年のように」
 
 私の知らないところで、折に触れて二人きりになる機会が設けられていたらしい。その光景を想像して、胸がむず痒くなる。
 
「ですからわたくし、思い切ってお尋ねしたんですの。アレクシス殿下は、ヴィオラさまを愛しておられるのでは? と」
 
「迷いなく、頷いておられましたわ。初めての恋なのだ、彼女の前では、ほんとうの自分でいられるのだと」
 
 セリーヌ嬢の語り口は穏やかだ。大切なことを伝えるように、ゆっくりと話してくれている。
 
「そのときの殿下はそれはもう、うっとりと優しいお顔をされていて……本当に、ヴィオラさまを大切に思っていらっしゃるのだと思いましたわ」

「そ……それは……なんというか……」
 
 いったい私は、どんな顔をすればいいのだろう。セリーヌ嬢は、それを聞いて傷つかなかったのだろうか。
 
「そして、悩み苦しんでもおられました。あなたにこんなことを伝えるのは心苦しいと、何度も謝っていらして……」
 
 嬉しい気持ちと、彼女への罪悪感が混ぜこぜになる。
 
「セリーヌ嬢。あなたは、アレクシス殿下をどう思っていらっしゃるのですか……?」