私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

山のように与えられたが、微笑みかけてもらった記憶すらない。

 娘を王家に嫁がせるのは当然、むしろ公爵家の義務であると考えていたし、幼い頃から何度も言い含められてきた。
 
 年頃になると、父の執念はますます激化した。王妃として相応しい娘であれと強いられ、なぜ王太子にもっと取り入らないのかと責められる日々が続いた。
 
「証拠はありませんし、証拠をつきつけたところで、わたくしはどうすればいいのか……」
 
 セリーヌ嬢がほっそりした指で顔を覆い、長いまつ毛を伏せて嘆く。

「ですが、もしこれが真実だとしたら」
 
 彼女は顔を上げ、私としっかりと目を合わせた。大きな瞳に、うっすらと涙が溜まる。しかしもう、泣き濡れてはいない。
 
「殿下にも、お友達のヴィオラさまにも、顔向け出来ませんわ」
 
 セリーヌ嬢の可憐な面差しに、確かな意志が宿る。
 
 私はじっくりと彼女の顔を見詰め——改めて、惚れ惚れとした。
 
「あなたは、美しい人ですね」
 
 思わず、感じたままの言葉がこぼれ落ちる。

 彼女にとって、父であるエルディシア公爵は、どんなに恐ろしい存在だろう。まるで王家に捧げる供物のように扱われ、大人しく従うように強いられ。
 
 その絶対的な父の行為を疑い、出来る範囲で戦おうとしているのだ。
 
「私が調べます。お任せください」
 
 調査チームが妨害されているのが事実なら、私が動かなければ真相は分からないままだ。
 
 誰がなんと言おうと、徹底的に調べて見せる。
 
 私の決意を感じ取ったのか——セリーヌ嬢は、いつもの花が咲くような微笑みを少し、取り戻してくれた。