「…恋?」


目の前には、恋の姿があった。
恋は、片手で先輩の拳を受け止めている。


「先輩、うちの妹に手をあげるなら、俺を通してからにしてもらえますか」


と、恋が言うと、先輩は舌打ちしたそうな顔をしていた。


「あの三人にバレたらマズいでしょ? 相手にされないどころか無視ですよ、無視。 今回はまだ黙っておきます。 でも次はあの三人、プラス俺で何するか分かりませんよ」
「わ、分かったわよ。 だから離して!」


恋は先輩の拳を手から放すと、三人はバタバタと出て行った。
三人の足跡が聞こえなくなる。


「愛、大丈夫?」


私は恋の腕の部分のシャツをつまんで、小さく震えていた。


「だ、大丈夫…」


「全然大丈夫じゃなさそうだけど」


そこは知らない振りをしてほしい。


「ちょっと、ちょっと…怖かっただけ」


「大丈夫。 あの人達は、あの三人に嫌われるのが一番怖いはずだから。 もう何もしてこないはずだよ」


「ほんと?」


「まあ、名前を特定できないイヤガラセとかはあるかもね? 不幸の手紙とか」


「こ、怖い事言わないでよー!」


「大丈夫だよ。 その時は俺も、あの三人もついてるでしょ?」


「…うん」


「ホラ、早く出よう。 他の子に見つかったら、俺が変態扱いされちゃうよ」


あ、そういえば、ここ…女子トイレだっけ。