「私、クラスでずっと見てたんだけど、主井さんから話しかける事はほとんど無いのに、香川くんや足利さん、沢尻くんからちょっかい出してる感じなのよね」


おっしゃる通りですが。


「どんな風に誘惑したの?」


と、雰囲気が一番怖い、三年生の先輩に睨まれる。
蛇に睨まれたカエルのような私は、冷や汗をダラダラと流していた。


ヤバイ、ヤバイ雰囲気!


「ゆ、誘惑なんて…してないですよ。 あ、ホラ! 三人とも、私の兄の恋と仲良しだから、じゃないですかね?」


「それだけにしちゃ、仲良すぎるわね」


ピシャリ、と言葉を遮るように言われた。


なんか、何を言っても駄目っぽく感じてきた。
どうしよう、絶対絶命のピンチだよ~。


「とりあえず、一回体でわからせた方がいいみたいね」



三人の手からは、コキコキッ、と関節を鳴らす音が聞こえる。


ど、どうしよう…ヤキ入れられる!?
拳が飛んできたとき、私は反射的に目を瞑ってしまった。




…………。


30秒くらい、目を瞑ったまま。
体のどこも痛くはない。


そおっと目を開けると、視界が誰かで阻まれている。