厨房もまた、戦場だった。
料理長は咳き込みながらスープを混ぜ、下働きの少年は鼻水を垂らしながら芋を剥いている。
うーん。
こんなところで料理がつくられていたとは……。
衛生的にアウトだ。
「みんな、ちょっと休憩!」
私が手を叩くと、全員がビクッとしてこちらを見た。
「奥様!? こんな所へ来ては風邪がうつります!」
「平気平気。私、聖なる力で守られてるから」
私は彼らを椅子に座らせると、大鍋を取り出した。
取り出したるは、大量の生姜。
風邪にはこれに限る!
トントントントン!
生姜を薄切りにしていく。
包丁がまな板を叩く音が、心地よく響く。
鍋にたっぷりの水を張り、スライスした生姜をドサッ。
そこに、黒糖をどっさり。
香り付けにシナモンスティックと、鷹の爪を一本だけ種を抜いて入れる。
この「鷹の爪」が隠し味だ。カプサイシン効果で発汗を促す。
「美味しくなーれ、悪い菌は飛んでいけー」
グツグツと煮立たせながら、聖女の力を注入。
今回は回復と解毒の祈りを込める。
厨房に、スパイシーで甘い香りが充満し始めた。
生姜のツンとした刺激臭が、黒糖のコクのある甘い香りと混ざり合い、鼻の奥をくすぐる。
匂いだけで体がポカポカしてきそうだ。
「はい、できた。元聖女特製『ホット・ジンジャー・シロップ』のお湯割り!」
私は使用人たち全員にマグカップを配った。
飴色の液体からは濃厚な湯気が立ち上っている。
料理長が恐る恐る口をつけた。
「……んッ!?」
彼の目がカッと見開かれる。
喉を通った瞬間、焼き尽くすような熱さが食道を駆け下りる。
それは痛みではなく、強烈な生命力の奔流だ。
生姜の辛味がガツンと来て、その直後に黒糖の優しい甘さがじんわりと広がる。
……はず。
「かぁ〜っ! き、効くぅ〜……!」
誰かが叫んだ。
青白かった肌に赤みが差し、額には汗が浮かぶ。
「な、なんだこれ……体が燃えるようだ!」
「鼻詰まりが……通った!?」
「喉の痛みが消えました!」
咳き込んでいた料理長が、立ち上がって屈伸運動を始めた。
さすがに元気すぎる……。
「奥様……これは一体……?」
「ただの生姜湯。ちょっと聖女パワーが入ってるけど……」
私がニッコリ笑うと、使用人たちは顔を見合わせ、次の瞬間、一斉にその場にひれ伏した。
「女神様だ……」
「氷の城に、女神様が舞い降りたぞぉぉぉ!」
「アマレッタ様万歳!!」
わあっと歓声が上がる。
涙を流して拝んでいる者までいる。
……いや、ちょっと大げさじゃない?
私はただ、快適な晩酌ライフのために環境整備をしただけなんだけど。
というか女神じゃなくて女神の使いである聖女だし。
いや、もう、聖女でもないんだけど……。
料理長は咳き込みながらスープを混ぜ、下働きの少年は鼻水を垂らしながら芋を剥いている。
うーん。
こんなところで料理がつくられていたとは……。
衛生的にアウトだ。
「みんな、ちょっと休憩!」
私が手を叩くと、全員がビクッとしてこちらを見た。
「奥様!? こんな所へ来ては風邪がうつります!」
「平気平気。私、聖なる力で守られてるから」
私は彼らを椅子に座らせると、大鍋を取り出した。
取り出したるは、大量の生姜。
風邪にはこれに限る!
トントントントン!
生姜を薄切りにしていく。
包丁がまな板を叩く音が、心地よく響く。
鍋にたっぷりの水を張り、スライスした生姜をドサッ。
そこに、黒糖をどっさり。
香り付けにシナモンスティックと、鷹の爪を一本だけ種を抜いて入れる。
この「鷹の爪」が隠し味だ。カプサイシン効果で発汗を促す。
「美味しくなーれ、悪い菌は飛んでいけー」
グツグツと煮立たせながら、聖女の力を注入。
今回は回復と解毒の祈りを込める。
厨房に、スパイシーで甘い香りが充満し始めた。
生姜のツンとした刺激臭が、黒糖のコクのある甘い香りと混ざり合い、鼻の奥をくすぐる。
匂いだけで体がポカポカしてきそうだ。
「はい、できた。元聖女特製『ホット・ジンジャー・シロップ』のお湯割り!」
私は使用人たち全員にマグカップを配った。
飴色の液体からは濃厚な湯気が立ち上っている。
料理長が恐る恐る口をつけた。
「……んッ!?」
彼の目がカッと見開かれる。
喉を通った瞬間、焼き尽くすような熱さが食道を駆け下りる。
それは痛みではなく、強烈な生命力の奔流だ。
生姜の辛味がガツンと来て、その直後に黒糖の優しい甘さがじんわりと広がる。
……はず。
「かぁ〜っ! き、効くぅ〜……!」
誰かが叫んだ。
青白かった肌に赤みが差し、額には汗が浮かぶ。
「な、なんだこれ……体が燃えるようだ!」
「鼻詰まりが……通った!?」
「喉の痛みが消えました!」
咳き込んでいた料理長が、立ち上がって屈伸運動を始めた。
さすがに元気すぎる……。
「奥様……これは一体……?」
「ただの生姜湯。ちょっと聖女パワーが入ってるけど……」
私がニッコリ笑うと、使用人たちは顔を見合わせ、次の瞬間、一斉にその場にひれ伏した。
「女神様だ……」
「氷の城に、女神様が舞い降りたぞぉぉぉ!」
「アマレッタ様万歳!!」
わあっと歓声が上がる。
涙を流して拝んでいる者までいる。
……いや、ちょっと大げさじゃない?
私はただ、快適な晩酌ライフのために環境整備をしただけなんだけど。
というか女神じゃなくて女神の使いである聖女だし。
いや、もう、聖女でもないんだけど……。
