「到着だ。ここが水源だが」
フロスティ様が足を止めた。
私も背中から降りて、目の前の光景を見る。
岩場に囲まれた小さな泉。
けれど、私の期待していたクリスタルウォーターではなかった。
「黒い……?」
水面は黒く濁り、どろりとした澱みが溜まっていた。
周囲には枯れ木が倒れ込み、なんとも言えない腐敗臭が漂っている。
「残念だが、瘴気が溜まったのだろう。魔獣も寄り付かん」
フロスティ様が眉をひそめ、片手を上げた。
「危険だ。凍らせて封印する」
彼の手のひらに、青白い冷気が集まる。
「ちょ、ストップ!!」
私は慌てて彼の手を掴んだ。
「何をする。汚染された水など、あっても害になるだけだ」
「もったいない! 元は綺麗な湧き水なんですよ? 汚れを取り除けば、最高のお酒……じゃなくて、命の水になるんです!」
「……取り除くと言っても、この量は」
「私に任せてください」
私は泉の前に進み出た。
深呼吸をする。
肺いっぱいに冷たい空気を吸い込み、意識を集中させる。
聖女の力。
それは、あるべき姿に戻す、還元の力だ。
(美味しいお酒のために。……いでよ、清浄なる輝き!)
私は両手を広げた。
「浄化ッ!!」
カッ!!
私の体から金色の光が放たれた。
それは波紋のように広がり、黒い水へと浸透していく。
ジュワアァァァァ……。
黒い澱みが、光に触れた瞬間に白い蒸気となって消えていく。
腐敗臭が消え、代わりに清冽な空気が満ちる。
光が収まった。
「……なんと」
フロスティ様が息を呑む。
黒かった水は、底の小石までくっきりと見えるほど透明になっていた。
水面は鏡のように空を映し、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
これだ。
私が求めていた、クリスタルウォーター!
私は手ですくって一口飲んだ。
「んんっ! 冷たくて、美味しい!」
雑味が一切ない。
喉に引っかかることなく、体の中に染み渡っていく。
これなら、最高のジンが作れる!
「やったー! 大成功です!」
私が振り返ってVサインをすると、フロスティ様は立ち尽くしたまま、私を見ていた。
泉を見ているのではない。
私を見ているのだ。
そのアイスブルーの瞳が、熱っぽく揺らいでいる。
「……美しいな」
彼がポツリと呟いた。
「え? 水がですか?」
「水も、だ。……だが、光の中に立つ君は……本物の女神のようだった」
彼は吸い寄せられるように歩み寄り、私の頬に触れた。
「……眩しくて、目が離せない」
至近距離で見つめられ、私の心臓がトクンと跳ねる。
浄化の魔法を使った直後だから体が熱いのか、それとも彼の視線のせいか。
相変わらず、無自覚に口説くのが上手い旦那様だ。
「……お腹空きませんか? ランチにしましょう、ランチ!」
私は照れ隠しに、持ってきたバスケットを持ち上げた。
フロスティ様が足を止めた。
私も背中から降りて、目の前の光景を見る。
岩場に囲まれた小さな泉。
けれど、私の期待していたクリスタルウォーターではなかった。
「黒い……?」
水面は黒く濁り、どろりとした澱みが溜まっていた。
周囲には枯れ木が倒れ込み、なんとも言えない腐敗臭が漂っている。
「残念だが、瘴気が溜まったのだろう。魔獣も寄り付かん」
フロスティ様が眉をひそめ、片手を上げた。
「危険だ。凍らせて封印する」
彼の手のひらに、青白い冷気が集まる。
「ちょ、ストップ!!」
私は慌てて彼の手を掴んだ。
「何をする。汚染された水など、あっても害になるだけだ」
「もったいない! 元は綺麗な湧き水なんですよ? 汚れを取り除けば、最高のお酒……じゃなくて、命の水になるんです!」
「……取り除くと言っても、この量は」
「私に任せてください」
私は泉の前に進み出た。
深呼吸をする。
肺いっぱいに冷たい空気を吸い込み、意識を集中させる。
聖女の力。
それは、あるべき姿に戻す、還元の力だ。
(美味しいお酒のために。……いでよ、清浄なる輝き!)
私は両手を広げた。
「浄化ッ!!」
カッ!!
私の体から金色の光が放たれた。
それは波紋のように広がり、黒い水へと浸透していく。
ジュワアァァァァ……。
黒い澱みが、光に触れた瞬間に白い蒸気となって消えていく。
腐敗臭が消え、代わりに清冽な空気が満ちる。
光が収まった。
「……なんと」
フロスティ様が息を呑む。
黒かった水は、底の小石までくっきりと見えるほど透明になっていた。
水面は鏡のように空を映し、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
これだ。
私が求めていた、クリスタルウォーター!
私は手ですくって一口飲んだ。
「んんっ! 冷たくて、美味しい!」
雑味が一切ない。
喉に引っかかることなく、体の中に染み渡っていく。
これなら、最高のジンが作れる!
「やったー! 大成功です!」
私が振り返ってVサインをすると、フロスティ様は立ち尽くしたまま、私を見ていた。
泉を見ているのではない。
私を見ているのだ。
そのアイスブルーの瞳が、熱っぽく揺らいでいる。
「……美しいな」
彼がポツリと呟いた。
「え? 水がですか?」
「水も、だ。……だが、光の中に立つ君は……本物の女神のようだった」
彼は吸い寄せられるように歩み寄り、私の頬に触れた。
「……眩しくて、目が離せない」
至近距離で見つめられ、私の心臓がトクンと跳ねる。
浄化の魔法を使った直後だから体が熱いのか、それとも彼の視線のせいか。
相変わらず、無自覚に口説くのが上手い旦那様だ。
「……お腹空きませんか? ランチにしましょう、ランチ!」
私は照れ隠しに、持ってきたバスケットを持ち上げた。
