総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ



研究室を出て、迷路のような廊下を戻る。


ロビーのソファでは、琥珀が手持ち無沙汰そうにスマホをいじっていた。

私に気づくと、彼はパッと顔を上げた。



「お、早かったじゃん。大丈夫だった?」



立ち上がり、ひょいと顔を覗き込んでくる。その距離に思わず後ずさりそうになる。



「なんか顔色悪くない? 教授に変なこと言われた?」

「ううん、大丈夫だよ。教授さん…‥ちょっと怖いけど、良い人だね」

「……え、良い人?」



一瞬きょとんとして、それから声を上げて笑った。



「あはは、胡桃って面白いね。あの人、俺には毎回出てけって言うのに。」

「そうなの?」

「なんか俺には当たり強いんだよねーあの人。なんでだろ」



琥珀は特に気にしてない風に笑っていたが、その理由を深く考える気もなさそうだった。


「ま、いっか。それよりさ、もう帰る?」


大学の出口に向かって歩きながら、ちらりと振り返る。


「せっかく来たんだし、学食でなんか食べてかない? ここのカレー、意外とうまいんだけど。」


琥珀にそう言われて、タイミングを見計らったかのようにお腹から音が鳴った。


「……今の、聞かなかったことにした方がいいやつ?」


にやにやが隠せていない。口元を手で押さえているが、肩が震えている。


「……も、もう…」


「いやー、体は正直だね。行こ行こ、奢るよ。」



断る間もなく、琥珀に手首を引かれて歩き出す。