「ずるいよ…もう…」
赤くなった顔を両手で隠す私を見て、叶兎くんは楽しそうに笑いながら私の手を取った。
「ほら、行こ!もう校門の前に時雨が車で待っててくれてるから」
時雨くんは私達よりも一足早く本部に移動していたため、学園での荷物の片付けには参加していなかった。
トップとなった叶兎くんの補佐として、正式にこれからも支えてくれる。
寮の扉を出ると、外の空気は少しだけ冷たかった。
学生生活は終わって、これからは——叶兎くんの隣で生きていく。
不安がないと言えば嘘になる。
でも、それ以上に。
叶兎くんと一緒なら、大丈夫だと思えた。
「忘れ物はない?」
運転席の窓から、時雨くんの姿。
「これで全部。わざわざ来てくれてありがとね」
車に荷物を積み込み、私は車窓から小さくなっていく思い出の学園の校舎を静かに見つめた。
けれど。
これからそう遠くない未来で、私と叶兎くんの絆と覚悟が試されることになるなんて。
この時の私は、まだ知る由もなかった──。


