総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





思わずばっと手で首元を押さえる。

……そ、そういえば昨日、吸われた痕そのままになってたんだった…!



慌てて、肩にかかっていた髪をがさっと前に流す。

首元を覆い隠すように横へ寄せて、念入りに鏡を覗き込んだ。


……うん。たぶん、見えない。



自分に言い聞かせるように何度も確認してから、逃げるように部屋を飛び出した。



玄関を出ると、すでに車が用意されていた。

黒い車体が朝の光を反射している。


車に乗り込んだあと、シートに深く身体を預けて小さく息を吐いた。


さっき慌てて髪で隠した噛み跡。

ちゃんと隠れてるはずなのに、なんだか落ち着かない。


屋敷を出る前、玄関で叶兎くんに見送られたときも、もしかして気づかれてるんじゃないかって、変にどきどきしちゃったけど…。


「いってらっしゃい」


額に軽くキスされただけで、それ以上は何も言われなかった。

……昨日はかなり酔ってたみたいだし覚えてないのかな、この痕のこと。



それとも、わざと……?

叶兎くんならやりかねない。

叶兎くんなら、平然とした顔をして、私が困るのを楽しんでいる可能性だってある。


指先で首元をなぞると、どうしても昨日のことを思い出してしまう。


でも。


なんだか、少しだけ叶兎くんのことを感じられる気がして。

この痕があるのも、悪くないと思ってしまう自分がいる。

 

……とはいえ。

見えるところには残さないで欲しい……!