総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ

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本部に戻ってきた頃には外は暗くなっていた。

昼間は人の気配で満ちているこの場所も今は静まり返っていて、窓から差し込む月明かりが床に淡く伸びているだけ。



「あのさ、胡桃」



部屋に戻ろうとしたところで背中越しに呼び止められて、私は足を止めた。


振り返ると、少し先の柱にもたれていた時雨くんがこちらを見ている。

やけに、真剣な視線。



「今日図書館で会った男のことだけど…」



図書館で会った男………琥珀の事かな…?



「………なんか胡散臭いから、あんまり信用しない方がいいかも」

「琥珀…何か怪しいところでもあった?」



時雨くんは一拍置いてから、


「直感」


とだけ言った。

…でも、時雨くんは意味もなくそんなことを言う人じゃない。



「とにかく、警戒心を持っておくに越したことはないから」



時雨くんがそう言うなら、一応注意しておこう。


……とはいえ連絡先交換しちゃったし、

また会う約束も、した。


あのときはほとんど流されるみたいな感じだったけど…。