「あ、うん!大丈夫」
振り返って答えると、男の人は時雨くんをちらっと見てから、また私に視線を戻す。
「友達?」
「うん」
そう答えると、特に深く突っ込むこともなく、
「そっか、じゃあ邪魔して悪かったね。俺、今レポート期限ピンチだから。もう行くね!」
彼は軽やかにひらひらと手を振ると、サッサと足早に去っていってしまった。
なんだったんだろう……?
ぽかんと背中を見送っていると、時雨くんが私の隣まで歩み寄ってきた。
「……今の人知り合い?」
「ううん。ぶつかって本を落としちゃったから、拾ってもらってただけだけだよ」
そう答えながら、私は無意識に彼が去った方向を見ていた。
「ふうん……。ただの、大学生にしては……」
「時雨くん?」
何かを警戒するように難しい顔をしていた時雨くんの名前を呼ぶと、ハッとしたように表情を崩し、私を振り返った。
「…いや。なんでもない。……あ、じゃあ俺奥の閲覧室も見てくるから、何かあったらすぐ呼んで」
「うん…?わかった!」
少しだけ不穏な空気を残しながらも、私たちは再びそれぞれの調査へと意識を戻すのだった。


