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本部に戻った頃には、すっかり夜も遅くなっていた。
執務室でソファに腰を下ろし、膝の上に広げた書類を一枚ずつ確認していく。
事件報告書に、能力使用の記録。
被害状況のまとめ。
今日も、無事に終わった。
そう思った瞬間、ふっと気が抜けて肩の力が少し落ちる。
「……ねえ胡桃、やっぱり思ったより疲れてる?」
隣からかけられた声に、思わず肩がぴくっと跳ねた。
顔を上げると、叶兎くんがこちらに身を寄せて私の手元を覗き込んでいる。
「大丈夫だよ。ちょっと集中してただけ」
そう答えると、叶兎くんは小さく首を傾げた。
「そう?」
疑うように首を傾げながらも、叶兎くんは私の持っている書類を一枚受け取って目を通し始める。
「無効化の力もだいぶ扱えるようになってきたよね。今日のあれ、胡桃がいなかったら被害増えてた。」
「でも、叶兎くんがいたからだよ。私、もっと頑張りたい…!」
素直な気持ちをそのまま口にすると、叶兎くんがちらっとこちらを見てほんの少しだけ笑った。
「でも、お願いだから無理だけはしないでね?」
「…う……それは、努力します」
……私には、無茶をした前科がある。
だからこうして心配されるのも、当然だってわかってる。
大事にされているのは嬉しい。
でも、それ以上に心配はかけたくない。
そんなことを考えていると、叶兎くんがふっと息を吐いた。

