──叶兎くん。
振り返らなくても、誰だか分かってしまう。
「大丈夫!そんなに重くないよ」
そう答えながら、私は段ボールを抱え直した。
中身は服と本と、あと細々した日用品。
そもそも持ってきたものが少ないしそんなに荷物は増えていない。
とはいえ実際それなりに重さはあるので、
抱え直した時によろけようになった。
叶兎くんは私の手元を一瞬見て、ふっと笑う。
「無理してる顔」
「してない」
「してる」
そう言って、叶兎くんは私の荷物をひょいと奪った。
抵抗する間もない。
吸血鬼と人間の腕力は天と地の差なので比べるもんじゃないけど、片手で普通に持ってて、何か悔しい。
「……ありがと」
「どういたしまして。」
そう言って、当たり前みたいに私の頭をぽん、と撫でる。
付き合って、それなりに経った。
手を繋ぐのも、隣に並ぶのも、彼の体温を感じるのも。
前みたいに、いちいち動揺しなくなる……はずなのに。
やっぱり叶兎くんに触れられると、いちいちドキドキしてしまうし嬉しいと思ってしまう自分がいた。

