総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「じゃ……俺はもう行く。胡桃も、元気で」



相変わらずぶっきらぼうでそっけない言い方だけど、その不器用な優しさがすごく九条くんらしい。



「うん! 九条くんも、体に気をつけてね!」

「……ああ。」



短く答えて先に歩き去っていく九条くんを見送っていると──隣に残っていた天音くんが、そっと私の名前を呼んだ。



「胡桃ちゃん。」

「ん……? どうしたの、天音くん?」



……実は、最近になって気づいたことがある。

天音くんが、本当に真剣な目をしている時は──いつもの「胡桃っち」というあだ名では呼ばない。



「あの時の言葉、嘘じゃないから。何かあったらいつでも連絡してね?」



“ でも、もしさ。叶兎の隣が苦しくなったら──俺のところにおいでよ”



……もう。天音くんは、本当に最後の最後まで変わらないんだから……。

困ったように笑う私を見て、天音くんは悪戯が成功した子どものように、いつもの調子でふんわりと笑った。



「…ありがと。天音くんも、困ったことがあったら頼っていいからね」



相変わらず読めなくて、意地悪で、でも最後までどこまでも優しかった天音くん。

彼がひらひらと手を振りながら寮を去っていくのを見届けた後、私はテーブルの上に置いていた段ボール箱をもう一度両手で抱え直そうとしたその時──。



「重くない?」



背後から伸びてきた声に、思わず肩が跳ねる。