「じゃ……俺はもう行く。胡桃も、元気で」
相変わらずぶっきらぼうでそっけない言い方だけど、その不器用な優しさがすごく九条くんらしい。
「うん! 九条くんも、体に気をつけてね!」
「……ああ。」
短く答えて先に歩き去っていく九条くんを見送っていると──隣に残っていた天音くんが、そっと私の名前を呼んだ。
「胡桃ちゃん。」
「ん……? どうしたの、天音くん?」
……実は、最近になって気づいたことがある。
天音くんが、本当に真剣な目をしている時は──いつもの「胡桃っち」というあだ名では呼ばない。
「あの時の言葉、嘘じゃないから。何かあったらいつでも連絡してね?」
“ でも、もしさ。叶兎の隣が苦しくなったら──俺のところにおいでよ”
……もう。天音くんは、本当に最後の最後まで変わらないんだから……。
困ったように笑う私を見て、天音くんは悪戯が成功した子どものように、いつもの調子でふんわりと笑った。
「…ありがと。天音くんも、困ったことがあったら頼っていいからね」
相変わらず読めなくて、意地悪で、でも最後までどこまでも優しかった天音くん。
彼がひらひらと手を振りながら寮を去っていくのを見届けた後、私はテーブルの上に置いていた段ボール箱をもう一度両手で抱え直そうとしたその時──。
「重くない?」
背後から伸びてきた声に、思わず肩が跳ねる。


