手を伸ばして引き抜いてみると、見た目よりもずっしりと重くて分厚かった。
そっと埃を払い、表紙の文字を読み上げる。
『人間と吸血鬼の共存──その可能性と限界』
人間と吸血鬼の、共存……。
………ハンターという、吸血鬼を狩る側の組織がこんなタイトルの資料を作っているなんて。
最初の章は『契約理論の基礎』
吸血鬼と、私たち純混血の間で結ばれる特別な絆や契約の仕組みについて、驚くほど細かい学術的な観点から解説されている。
次のページは『能力強化と無効化の相互作用』
私の持つ「無効化」の力についても触れられていて思わず息を呑んだ。
………これ、かなり重要な資料じゃない?
なんでハンターがこんなものまで…?
さらにページを進めていくと、やがて一番最後の章に差し掛かった。
『契約で手に入れる能力』『それに伴う危険性』
その考察の最後に書かれているはずの著者の名前の欄に目を落とした瞬間、私は小さく息を詰まらせた。
名前の部分がインクのようなもので意図的に真っ黒に塗りつぶされていたのだ。
何かを隠すように、完全に。
諦めきれずに本を顔に近づけて限界まで目を凝らしてみると、黒塗りのほんの少しの隙間、かすかに残った掠れた文字の痕跡が読み取れた。
「……っ、“栗栖”……?」
心臓がドクン、と嫌な音を立てて跳ね上がった。
栗栖って……天音くんの、苗字……。
頭の奥が急速に冷えていくのを感じながら、真実を確かめるために勢いよく次のページをめくった。


