『……事情は分かったけど…約束して。危ないと思ったらすぐ連絡すること』
「うん、約束する」
『……………はー……今すぐそこに行って、会いたい、抱きしめたい』
受話器の向こうから聞こえる切ない呟きに、私の胸がキュッと締め付けられるように痛む。
会いたい。
その一言は、そのまま私の喉元まで出かかっていた。
今すぐ叶兎くんの腕の中に飛び込んで、その温もりに包まれたい。
その気持ちをぐっと堪えて、自分を奮い立たせるように微笑んだ。
「……私も……会いたい。だからこそ、一刻も早く事件を解決しないとね……!」
『……ん。分かってる。』
それからしばらく他愛もない話をして、気づけば30分も通話していたらしい。
電話が切れたあとはスマホをぎゅっと握りしめて、しばらくそのまま立っていた。
両手で自分の両頬をパンッと叩いて、気合を入れ直す。
琥珀との取引は無事に成立した。
明日からこの建物の中を自由に歩き回れるなら、私にだってやれることはたくさんあるはずだ。
私はスマホをベッドサイドに置くと、布団の中に潜り込んでゆっくりと目を閉じた。


