大通りはさっきよりも人が増えていて、
朝の仕込みを終えた店から、香ばしい匂いが流れてくる。
「ここ、昔よく通った道なんだ」
隣を歩く叶兎くんが、何気ない様子でそう口にした。
「学校帰りとか?」
「いや、逃げ道」
……逃げ道???
想定外すぎる答えに私が思わず首をかしげると、叶兎くんはどこか楽しそうに苦笑した。
「小さい頃、怒られるとさ。母さんから逃げるルートが何個かあって」
「ふふ、叶兎くんでも怒られてたんだ」
「そりゃね。それなりにやんちゃだったし」
叶兎くんにもそんな時期が…!
なんか、ちょっと見てみたいかも。
そんな想像をして胸を躍らせながらしばらく歩いていると、叶兎くんがふと足を止めた。
こちらへ振り向くと、じっと私を見つめてくる。
「……胡桃。俺さ」


