『……胡桃?』
受話器の向こうから聞こえてきたのは、叶兎くんの低い声。
…怒っているのか、それとも安堵しているのか判別がつかない。
『今どこにいるの、まだハンターの本部?さっき楪から胡桃をハンターで預かることになったとかふざけたこと言われたんだけどそれ本当?』
一気に捲し立てる叶兎くんの気迫に押されそうになりながらも、私は慌てて声を返す。
「ま、待って待って、叶兎くん落ち着いて!……あのね、ちょっと色々あって」
私は焦りながらも、今日ここへ来てからの経緯を順序立てて説明した。
けれど私が最後まで話し終えるより前に、叶兎くんの声が鋭く割り込んでくる。
『は、閉じ込められた……!?やっぱあいつ、適当なこと言って──』
「ちょ、最後まで聞いてってば…!」
私は受話器に向かって声を張り上げた。
このままだと、本当に今すぐ叶兎くんが特殊警備隊の総力を挙げてハンター本部に正面から殴り込みをかけかねない。
「あのね、確かに最初に琥珀に強引に部屋に閉じ込められたのは本当だけど、さっき私、琥珀と『取引』をしたの」
『……取引?』
叶兎くんの声のトーンが、怪訝そうに少しだけ下がった。
「うん。琥珀、本気で私を部屋から出すつもり無さそうだったから……大人しく保護される代わりに、ハンターが持ってる情報や資料を見せてもらえないかって」
そこまで一気に説明すると、電話の向こうの叶兎くんが完全に黙り込んでしまった。


