沈黙の中心臓がバクバクと嫌な音を立てるのを必死に隠していると、やがて、琥珀の口角がにやりと意地悪に上がった。
「交渉上手じゃん」
「…どういう意味?」
「いいよ。その取引。」
「…………え、いいの?」
あまりにもあっさりとした快諾に、拍子抜けしてしまったのは私の方だった。
思わず目を丸くする私を見て、琥珀は肩をすくめて苦笑する。
「正直ずっとこの狭い部屋に閉じ込めとくのも限界があるなって思ってたんだよ。胡桃は暴れはしないだろうけど、このままだと君じゃなくて、赤羽くんの方がキレてここに無理やり押しかけてきそうだしさ」
………否定できないな。
叶兎くんのあの過保護っぷりを思い出し、私は内心で冷や汗をかいた。
「ただ、それなら条件がある。君からちゃんと赤羽くんに説明してよね。自分の意思でここに残ってるんだってこと。彼と本気で喧嘩するのは、ハンターとしても今の時期は特に望んでないから」
「……分かった。私から叶兎くんに話す」
「よし、交渉成立。ただし、立ち入り禁止区域には最新のセンサーが付いてるから、そこには近づかないでね?」
琥珀はそう言って椅子から立ち上がると、ズボンのポケットから一枚の薄いカードキーを取り出した。
「セキュリティ解除用」
手のひらにプラスチックのカードキーが乗せられる。
思ったよりもずっと簡単に、交渉が成立してしまった。


