総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





「ただいま〜」



入ってきたのは琥珀だった。

その顔にはいつもの調子の良い笑顔はなく、どことなく疲労の色が濃く滲んでいる。


琥珀は部屋の椅子を引いて腰を下ろすと、ふぅ、と深い息を吐き出した。


その手には、タブレットがしっかりと握られている。

私はゴクリと息を呑み、まっすぐに琥珀を見つめた。



「…琥珀」

「ん?」

「……私と、取引しない?」

「…………取引?」



琥珀はきょとんとした顔で、目を丸くしてこちらを見た。


この状況で一体何を言い出すんだ、という警戒と、純粋な興味が半分ずつ混ざり合ったような顔。



「…私は、大人しくここにいればいいんでしょ?だったら、その代わり建物内は自由に動けるようにしてほしいの。それでハンターが持ってる情報や資料を、私にも閲覧させて」



一気にまくしたてると、琥珀は何も言わずに私の言葉をじっと待っている。

私は諦めずに続けた。



「それをしてくれるなら余計な抵抗もしないし、大人しくハンターの保護下にいてもいい」

「……ふぅん」



琥珀は細い人差し指を自分の顎に当てて、しばらくの間、値踏みするような視線を私に送ってきた。