けど、パソコンの側面に刺さっていたUSBメモリを抜き取る彼の動作だけはやけに素早かった。
まるで、私にそれ以上何も見せたくないと焦っているかのように。
「……橘さん。それ、なんですか?そのメモリだけ開けなかったんですけど」
私は逃げ道を塞ぐように単刀直入に切り込んだ。
橘さんの手が、ピタリと止まる。
ファイルを棚に戻そうとしていた体が一瞬だけ硬直したあと、彼はゆっくりと私の方を振り返った。
「……部外者に教えられるものじゃない」
橘さんはそれだけを冷たく告げると、手の中のUSBメモリを自分のポケットの奥深くへとしまい込んだ。
「じゃ、これ夕食だから。ちゃんと食べ──っ」
橘さんが手元に持っていたお盆をデスクに置き、そのまま部屋を出て行こうとした、その瞬間。
橘さんの体が、ぐらりと大きく傾いた。
「……っ、橘さん!?」
私は半ば反射的に椅子を蹴り、橘さんの方へと手を伸ばしていた。
橘さんはすんでのところでデスクの縁を両手で掴み、なんとかその場に踏みとどまる。
だけど、その腕はかすかに震えていた。
「……っ、なんでも、ない。」
「なんでもないわけないですよね…!?」
伸ばした私の手を拒むように一歩下がった橘さんの顔を見て、私は息を呑んだ。
顔色は血の気を失って真っ白になっているし、唇の色も驚くほど悪くて…今にもその場に倒れ込んでしまいそうで。


