総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ



けど、パソコンの側面に刺さっていたUSBメモリを抜き取る彼の動作だけはやけに素早かった。


まるで、私にそれ以上何も見せたくないと焦っているかのように。



「……橘さん。それ、なんですか?そのメモリだけ開けなかったんですけど」



私は逃げ道を塞ぐように単刀直入に切り込んだ。


橘さんの手が、ピタリと止まる。

ファイルを棚に戻そうとしていた体が一瞬だけ硬直したあと、彼はゆっくりと私の方を振り返った。



「……部外者に教えられるものじゃない」



橘さんはそれだけを冷たく告げると、手の中のUSBメモリを自分のポケットの奥深くへとしまい込んだ。



「じゃ、これ夕食だから。ちゃんと食べ──っ」



橘さんが手元に持っていたお盆をデスクに置き、そのまま部屋を出て行こうとした、その瞬間。

橘さんの体が、ぐらりと大きく傾いた。



「……っ、橘さん!?」



私は半ば反射的に椅子を蹴り、橘さんの方へと手を伸ばしていた。


橘さんはすんでのところでデスクの縁を両手で掴み、なんとかその場に踏みとどまる。

だけど、その腕はかすかに震えていた。



「……っ、なんでも、ない。」

「なんでもないわけないですよね…!?」



伸ばした私の手を拒むように一歩下がった橘さんの顔を見て、私は息を呑んだ。


顔色は血の気を失って真っ白になっているし、唇の色も驚くほど悪くて…今にもその場に倒れ込んでしまいそうで。