「……でも、この事故の犯人が卯月要だったとして、天音の両親を殺す理由ってなに?」
「理由はまだ完全には解明できてない。……ただ、ひとつだけ確かなことがある。」
楪くんが次のページを開くと、そこには過去数十年の日付の羅列と、赤いマーカーで丸く囲まれたいくつかの人間の名前が並んでいた。
「この事故が起きた前後三年間、全く同じ手口の…不自然な『未解決の事故死』が他に三件起きてる。でね、そのすべての被害者に、ある明確な共通点があったんだよ」
「……共通点」
「全員、吸血鬼の血液や純混血に関して研究してた科学者、もしくはその関係者。」
脳を直接殴られたような衝撃。
頭の中が、真っ白に染まっていく。
「……は……?」
「君のご両親、当時『純混血と吸血鬼の、契約がもたらす能力への影響』について、かなり深いところまで調べてたらしいんだよね」
「俺の両親が……契約の研究を……?」
必死に幼い頃のおぼろげな記憶を手繰り寄せようとする。
確かに、両親の狭い書斎にはいつも見慣れない専門的な研究資料や、英語の難しい本が山積みになっていた。
子供の俺にはさっぱり理解できなくて、「毎日難しい本ばっかり読んでる、ちょっと変わった学者肌の親だな」としか思っていなかったけど…あの研究の正体が、吸血鬼に関するものだったなんて。
「彼らが掴んでいた研究データを奪うか、もしくは……世に出る前に完全に消すか。どっちにしろ、口封じが目的だったんじゃないかな。卯月要にとって、その研究は邪魔だったんだよ」
部屋に、重苦しい沈黙がドサリと落ちた。
叶兎が隣で腕を組んだまま、何かを深く深く考え込むようにして目を伏せている。


