「この映像、観てごらん」
楪くんが手元の画面を小さくタップした。
画面が切り替わり、とある古い動画ファイルが再生される。
白黒の、荒い、おそらく街頭の防犯カメラの映像だった。
暗い雨の夜道、微かに光る街灯の下を相合い傘をして並んで歩く二つの影。
見間違えるはずがない。
あの独特な歩き方、小柄なシルエット。
父さんと母さんだ。
俺が最後に見た、あの日の二人の姿。
すると画面の端から、ライトを消した一台の黒い乗用車が猛スピードで突っ込んできた。
ブレーキの音すら画面からは聞こえてこない。
減速する意志など微塵もない、明確な殺意の塊。
ドン、という無音の衝撃。
衝突の直前、父さんが母さんを必死に庇うようにして、その細い腕を思いきり伸ばすのがスローモーションのように見えて──。
「——っ、」
強烈な吐き気が込み上げて、俺は思わず口元を両手で押さえた。
見たことがある映像だ、と思っていた。
…いや、テレビのニュースや警察で見せられたのは、衝突した『その後』の、無惨に壊れた車の写真だけだったはずだ。
だけどこれは違う。
これは、事件が起きるその瞬間の、本物の記録映像だ。
車のナンバープレートもその後の冷酷な動きも、すべてが鮮明に映し出されている。


