「俺はこれからまた仕事あるからもう行くけど、この部屋の中なら好きにしてていいよ。ご飯もちゃんと美味しいの持ってきてあげるし、不自由はさせないから」
好きにしてていい、って……
こんな風に強引に軟禁しておいて、好きも何もない。
私がいくら睨みつけて抗議しても、琥珀は私の声なんて最初から聞こえていないかのように、さっさと立ち上がって自分の衣服の乱れを整え始めた。
「ちょっと、琥珀、ふざけないで──」
「じゃ、また後でね」
ひらひらといつもの軽い調子で手を振って、琥珀は私を残して部屋を出ていってしまった。
がちゃり。
外側から、施錠の音が響く。
続いて規則正しい足音が、廊下の奥へと遠ざかっていくのが分かった。
部屋に残されたのは、完全な静寂。
「えぇ…………」
パチパチと蛍光灯の微かな唸りだけが残った冷たい部屋で、私はぽつんと一人、呆然と立ち尽くしていた。
念のためにポケットの中のスマホを取り出して確認してみる。
画面の右上には琥珀の言った通り、『圏外』の二文字が白く光っていた。


