とは言え落ち込んでいる暇はない。
……今だ……っ!
琥珀がドアの前から動いたその一瞬、考えるよりも先に体が反射的に動いていた。
隙を突き、琥珀の横を猛スピードですり抜けてドアへと駆け寄った。
必死の思いで金属のノブを掴み、力任せに回す。
……けれど、ガチャガチャと虚しい音が響くだけで、扉はびくともしない。
「……っ、開かない……!」
「おっと──」
背後から伸びてきた力強い腕に、一気に手首を掴まれ、強引に後ろへと引き戻された。
「っ……!?」
急激な引っ張りにバランスを崩してよろめいたところを、そのまま背後から包み込まれるようにがっしりと抱き留められて。
背中に、琥珀の体温がダイレクトに伝わってくる。
「……暴れると怪我するよ?」
耳のすぐ後ろ、至近距離で囁かれる低い声。
背中にぴったりと密着した体から伝わってくる心臓の鼓動は、私のバクバクとした早鐘とは対照的に、驚くほど静かで一定だった。


