あまりの大きな音に、私はヒッと喉を鳴らして肩をすくめた。
「それが甘いって言ってんだよ……!」
琥珀が、狂おしそうに叫んでいた。
いつもみたいなあの飄々とした仮面が、完全に粉々に砕け散っている。
その下から現れたのは吸血鬼に対する激しい怒りと、恐怖が入り混じった子供のような顔だった。
「……っ……!」
心臓がバクバクと嫌な速さで脈打つ。
びっくりして、声がうまく出ない。
な、なんで……なんでそんなに怒ってるの……?
今の琥珀は、ハンターとしての任務や義務感で動いているようにはどうしても見えなかった。
組織のために私の能力が必要だという理屈を超えて、もっと個人的な、ドロドロとした強い感情が琥珀を必死にさせている。
それが何なのか、私には分からなくて怖かった。
琥珀は肩を大きく上下させ、荒い呼吸をひとつ吐き出すと片手で乱暴に額を押さえた。
自分でも感情が暴走してしまったことに気づいたのか、苦しそうに、きつく目を閉じる。
「……ごめん。怒鳴るつもりじゃなかった」
絞り出すように言った琥珀の声は、まだ小刻みに震えたままだ。


