「合成血、か。それで暴走が人為的に起こせるなら相当まずい話だな」
男の言葉を皮切りに、幹部たちの間に一斉に張り詰めたざわめきが走る。
彼らは互いに目配せをし、今私がもたらした最悪の情報を頭の中で必死に咀嚼しているようだった。
その様子を見て私は思わず拍子抜けしてしまい、恐る恐る口を開いた。
「信じて、くれるんですか……?」
てっきり、「吸血鬼を庇うための嘘だ」とか「証拠はあるのか」と激しく追及されるものだとばかり思っていた。
こんなにあっさり納得してもらえるなんて。
幹部の男はトントンと人差し指でテーブルの木目を叩きながら、ふっと表情を和らげた。
「……信じるも何も、今の話を聞けば状況証拠が完璧に揃ってる。……実はな、これまで街で暴走して拘束された吸血鬼どもの血液成分分析、うちのラボでも結果が出てたんだよ。──複数の吸血鬼の血が混合された痕跡があるってな」
「え……っ」
「それに、あの動画が捏造だってことも、音声の加工パターンからとっくに裏は取れてた。ただ、その事件の背景にある『目的』や『手段』が、うちの捜査能力を以てしてもどうしても見えてこなかったんだ」
男の言葉を聞いて、私はハッと目を見開いた。
……そうだったんだ。
ハンターはハンターで、あの大混乱の裏で、ちゃんと独自に調査を進めていた。
ただ表に出せない機密情報が多すぎたせいで、お互いに持っている情報のパズルのピースが噛み合わず繋がらなかっただけで。
おそらく、この高度な分析結果もハンター全体ではなくこの幹部内のみで秘匿されていた情報だから、さっき街で会った一般のハンターの人たちは知らなかったのだろう。


