総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




ぱんっ!と琥珀が景気よく両手を叩く。



「じゃ、交渉成立ってことで!今夜の夜八時に、ハンター本部入口で合流ね」



そう言うと琥珀はひらりと背を向け、手を大きく振りながら大通りの人混みの中へと軽やかな足取りで去っていっていった。

残されたのは、騒がしい街の中で私と叶兎くんの二人だけ。


私はしばらくの間、琥珀の後ろ姿をじっと見送っていたけど、不意に隣からの強い視線に気づいて顔を上げた。

叶兎くんが、ひどく切なげな瞳で私を見つめていたから。



……言葉にしなくても、叶兎くんが本当は私を一人きりでハンター本部なんていう場所に活かせたくないことくらい、痛いほど伝わってきた。


でも、叶兎くんが吸血鬼な以上、一緒には行けない。

私のことを心配して、大切に思ってくれているからこその葛藤。


そっと、叶兎くんの温かい手のひらが私の頭の上に置かれた。



「……頼んだよ、俺の代わりに」

「……っ!」



ただそれだけなのに、胸の奥がキュッと締め付けられるように熱くなった。


叶兎くんに頼まれた。

私を信じて、任せてくれた。


それがたまらなく嬉しくて、同時に、彼の期待にちゃんと応えられるだろうかという緊張感が身体を駆け巡る。

私は小さく、だけど力強く頷いた。



「……任せて!」



本当を言えば、今だって一人でハンター本部に乗り込むのは怖いし、何より、こうしている今だって叶兎くんの隣にいるのが一番安心できる。

だけど、ハンターと連携を取るということはきっと、人間である私だからこそ出来ることだ。



夜の約束の時間まで、あと数時間しかない。

やるべきことは山ほどあった。

ハンターの幹部たちの前で何をどう話すか、私たちの情報をどこまで開示して、どこから隠すべきかの明確な線引き。


屋敷へと戻る車の後部座席、静寂に包まれた車内で、叶兎くんの指がそっと私の指の隙間に滑り込んできた。


お互いに何も言わなかった。

ただ、示し合わせたわけでもなく、自然と指と指を絡め合う。

繋がれた体温は、とても暖かかった。