──卒業。
それぞれが、それぞれの場所へ進んでいく。
今日という日が、私たちがこの白星学園に集う、本当に最後の日。
この学園卒業という節目のタイミングに合わせて、『White Lilly』の幹部グループも、一時的に空席になることになった。
叶兎くんがトップの後継者として指名されてからは、一時的に流風くんに総長の座を引き継いでいたみたいだけれど、卒業を迎えたこのタイミングで、正式に流風くんへバトンが手渡されたんだとか。
これからも『White Lilly』は、街や学生たちの治安維持を目的に、人々にとって一番身近で頼れる存在として街を守り続けてくれるらしい。
そして、街も学園も驚くほど平和になり、治安が格段に良くなっていた。
それをきっかけに、生徒会メンバーが卒業するこのタイミングで見直しが行われ、白星学園の生徒会制度そのものが新しく生まれ変わることになった。
今では吸血鬼だけでなく、人間からの生徒会役員の選考も始まっているらしく、人と吸血鬼が歩み寄る第一歩としてこれは本当に素晴らしい傾向だと思う。
ちなみに、春流くんと桐葉くんの二人は、揃って難関と言われる名門大学に進学することが決まったらしい。
同じキャンパスで、学部はそれぞれ別々。
春流くんは看護学部へ、そして桐葉くんは教育学部へ進むそうだ。
二人とも、驚くほどそれぞれの雰囲気にぴったりの道だと思う。
「でもさ、寮生活が終わるだけで、会えなくなるわけじゃないよ!」
私の寂しそうな顔を察したのか、春流くんが明るい声で笑ってみせると、桐葉くんも腕を組んで力強く大きく頷いてくれた。
「だな。俺らもたまにはそっちに顔出すから。…胡桃も、これから大変だと思うけど、頑張れよ」
「うん…ありがとう!2人も頑張ってね」
「じゃあな!」と二人爽やかに手を振り、思い出の詰まった寮の大きな扉から出ていく後ろ姿を、私は胸をいっぱいにしながら見送った。
すると今度は、奥の部屋のドアがガチャリと開き、天音くんがのそりと姿を現した。
「あ、胡桃っち」
出会った最初の頃から今日まで、結局その独特で妙な呼び方は変わらなかったな。
なんだかそれが無性に天音くんらしくて、おかしくて、思わずふっと胸が温かくなって笑みが零れた。


