総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「……胡桃に手出したら殺すぞ」



剥き出しの敵意。

でも怯むどころか、男はさらに深く笑みを深めた。



「怖いなぁ。でも安心して。あの子も大事なサンプルだから、丁寧に扱うよ。今はね。」

「……サンプル、ね。ふざけたことを」



叶兎は視線を低く落とし、手首にかかった拘束具に意識を集中させた。


身体能力の極限まで高めて、力任せに金属を左右に引く。

ミシミシ、と鉄が悲鳴を上げ始めるが、拘束具はびくともしない。



「あ、無理しない方がいいよ。それ対吸血鬼の特別製だから。君でも壊すのに数分はかかるんじゃない?」



男は実験動物の観察でもするように、叶兎のあがきを余裕の表情で見守っている。

でも、叶兎の口元が不敵に歪んだ。



「数分ありゃ十分だろ」



その瞬間、バキッ、と嫌な音。

右手首の拘束具に亀裂が入った。


数分どころか、数秒で。



「……は?」



男の柔和な笑みが、初めて固まった。


拘束具を食い千切るようにして、叶兎の右手が自由を手に入れる。

飛び散った金属の破片が白衣を掠めた。