総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





「……叶兎なら多分、すぐに殺されることはない。もし目的が殺しなら、わざわざ手間をかけて攫ったりしない」



それは私を励ます言葉というより、自分自身に言い聞かせているような、祈りに似た声だった。



「……そう、だよね」



それでも、心配で。…叶兎くん…。

私は震える声で同意したけれど、胸の奥の不安は消えない。



「…でも、叶兎が捕まったなんて話が広まったら洒落にならない。特警の一部の上層部には伝えるけど、できる限り少人数で叶兎を救出したい」

「……少人数で、か。正直キツいな」



蓮水さんが前を見据えたまま、ハンドルのグリップを強く握る。



「…わかってる。でも本部の連中に知られたら面倒なことになる。吸血鬼トップの後継が攫われたなんて、上の老人どもが黙ってるわけない」

「……政治の話かよ」



九条くんが心底嫌そうに吐き捨てた。



「そう、政治。だからまず、中の構造をある程度把握してから動く。侵入ルート、罠の有無、あの男の戦力。もう少し情報が欲しい」

「…私、なにか出来ることはある…?」



膝の上でギュッと握り拳を作って、私は時雨くんを見つめた。