「…だから余計に厄介。他にもどんな罠が仕掛けられているかわからない。」
時雨くんの言葉に、また沈黙が落ちる。
「それにこのまま丸腰で突っ込むのは……自殺行為に近い。……近くにいるなら叶兎の位置も俺の能力で読めるはずなのに全くひっかからないし、特殊な結界が貼られてる可能性もある」
GPSが消えた地点から約三百メートル。
雑草に覆われた、車一台がやっと通れるほどの砂利道が山の深部へと続いている。
その先に、不気味に佇む廃墟の影が見えた。
「……戻るか?」
蓮水さんが確認するように尋ねる。
時雨くんは一度だけ、悔しそうに拳を膝に叩きつけた。
「……場所は特定した。永季、ここからの道順を記憶して。秋斗は周辺の監視カメラの位置を確認して。」
時雨くんのこういうところを見ると、改めてすごいなと感じる。
この短時間での判断能力と、仲間を導く力。
それは叶兎くんとはまた違う、強固なリーダーシップだった。
車が砂利道で静かにUターンする。
来た道を戻り始める車内では、誰も言葉を発しなかった。
窓の外を流れる木々の影がまるで嘲笑うように揺れている。
そんな沈黙を破ったのは、時雨くんだった。


