総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





「……困ったな。」



男が頬をかき、本気で困ったように肩をすくめる。



「その子を離してくれれば、君には何もしない。本当だよ。」



嘘か本当かわからない。

でも私には選択肢が残されていなかった。

能力を使おうにも対象が多すぎる上に、今から無効化を使ったところで2人とも眠ってしまっていて間に合わない。


その時、叶兎くんが微かに残る意識でポケットから携帯を取り出し、私の手に押し付けた。



「……叶兎くん…?」

「……これを、時雨に……」



時雨くんに、渡せってこと…?

いったいどういう……。



「何、こそこそやってるの?」



男が一歩踏み出した。


男が叶兎くんの腕を掴み、軽々と担ぎ上げる。

この細身の体のどこに、そんな力が隠されているのか。



「叶兎くん──!」



叶兎くんの薄れゆく意識の中で、ほんの一瞬だけ目が合った。

大丈夫、と唇が動く。


……え…?


それだけを残して、彼は完全に脱力した。

男は叶兎くんを肩に担ぎ上げ、裏口へ向かう。