総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「やっぱり君には効かないんだね、…最高だよ、朝宮さん。」



男が目を輝かせて私を見た。

叶兎くんの指が、男の首から力なくずるりと離れる。



「……く、るみ……逃げ──」



そのまま、叶兎くんの体が床に崩れ落ちた。

天音くんも壁にもたれかかるようにして意識が朦朧としている。


男は服の乱れを直しながら、ゆっくりと叶兎くんに近づいた。



「叶兎くんに触らないで…っ!!」



私は無我夢中で、倒れた叶兎くんの前に飛び込んだ。

この男、普通じゃない。

こんな人に叶兎くんを渡す訳には…!



「……へぇ。」



男は立ち止まって、興味深そうに私を見下ろす。



「勇敢だね。でも状況、わかってる?君以外の全員が眠ってる。君一人で何ができる?」



背後で叶兎くんのかすかな呼吸音。

生きてはいる……けど起きない。あの叶兎くんが。



「俺は君を傷つけるつもりはないよ。だから、どいてくれないかな。」



男が優しい声と共に手を差し出した。

でもその手は、さっきガスと針を撒いた同じ手。


また…私、何もできないの…?


私は、意識を失った叶兎くんをぎゅっと抱きしめた。