「この部屋はこういう時のためにちょっとした仕掛けがあるんだ。実験用に作ったんだけど、まだ試したことなくて。」
カチリ、と音がした。
同時に天井のダクトから一気に白い霧が噴き出す。
「2人とも、息止めろ!」
叶兎くんの叫びに合わせて、天音くんとわたしは手で口を覆って息を止める。
その間に叶兎くんはガスの影響が出るよりも早く、身体能力を駆使して男との距離を詰めた。
素手で男の首を掴み、デスクに叩きつける。
その衝撃で男の眼鏡が飛んだ。
「──っは、いいね。君の身体能力は素晴らしい」
首を絞められながらも、男は狂ったように笑っていた。
「……気持ち悪いな、お前。」
「ひどいなぁ。…でもね、もう遅いよ。」
ガスはすでに部屋中に充満していた。
男を押さえつけているせいで口元を抑えられていない叶兎くん自身の呼吸にも、確実に入り込んでいた。
「……っ!」
すると突然、叶兎くんと天音くんが糸の切れた人形のように、よろめきながら膝をついた。
このガスのせい……!?
でも、私……なんともない。
同じ空間にいるはずの私は、何の眠気も感じない。
もしかして、私の「無効化」が、ガスの成分を打ち消してるの……?


