男は注射器をくるくると回しながら、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。
そこに、天音くんが即座に割り込んだ。
「ストップ。」
男の足が止まり、天音くんをちらりと見る。
天音くんは男をじっと見つめ、その水色の瞳に力を込めた。
魅了の能力を使おうとしている。
でも、目の前の男の歩調は微塵も乱れない。
「そんなに見つめて、どうしたのかな? 恋でもしたかい?」
「……効かない……?」
天音くんの額に、うっすらと汗が浮かぶ。
魅了が、効いてない……?
男はにっこりと笑い、天音くんの能力を嘲笑うかのように受け流した。
「無駄だよ。さて。お喋りはこのくらいにしようか」
男が手を掲げた瞬間、手元から細い針が三本同時に放たれる。
「っ──!」
「!?」
叶兎くんが咄嗟に私を抱き寄せ、横へ跳ぶ。
一本が叶兎くんの頬をかすめ、背後の壁に突き刺さった。
あの針だ……暴走した人たちの腕に残っていた、あの跡と同じ……!
白衣の男はすでにデスクの裏から何かの装置を引っ張り出している。


