「わかってる。だから危ないって言って──」
「わかってないから、あの子は怒ってるんでしょ」
……核心を突かれ、言葉に詰まる。
楪はへらっと笑ったが、その瞳の奥はひどく冷静に俺を観察していた。
怒りが、じわじわと拳に溜まっていく。
「……っお前なんかに、何が分かるんだよ…!」
「やめろ、ここでやり合うのは。」
殴りかかりそうになった俺たちの間に、橘が割って入った。
「吸血鬼の次期トップとハンターが、ここで派手な喧嘩なんて洒落にならないだろ」
……橘の言うことはもっともだ。
射撃スペースに、重苦しい沈黙が落ちる。
俺は手の中の銃を見つめたまま、金縛りにあったように動けなかった。
「赤羽様、次は鷹宮家の当主がご挨拶に」
神代さんの声にハッとして、現実に引き戻された。
今は、懇親会の最中。
……ダメだ、こんな状態で、仕事なんて手に付くわけがない。
今の俺にとって、次期トップとしての挨拶回りなんて、どうだっていい。
そんなことよりも、今すぐ胡桃を見つけて、胡桃の顔が見たい。
「……悪い。少し外す。」
「 ……承知しました。後のことは、私がうまく取り繕っておきます」
ホールを早歩きで横切る。
すれ違うハンターや吸血鬼たちが、愛想笑いを浮かべて挨拶をしてくるけど、それらすべてを無視して突き進んだ。


