総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




今度はベンチから立ち上がった楪が、ぽりぽりと頭を掻きながら、ため息混じりに口を開く。



「あーあ。泣かせちゃった。」



その言葉にカッとなって、俺は鋭く睨みつけた。



「……黙れよ」



言葉とは裏腹に、胸の奥はぐちゃぐちゃだった。



……胡桃のあんな顔、初めて見た。

泣かせたかった訳じゃない、あんな顔させたかった訳じゃない。



俺はただ、胡桃を守りたいだけで……。

できる限り、危険なことして欲しくなくて……。



…………いや、でも、…分かってる、これは俺の勝手なエゴだ。



認めざるを得ない。

俺は、胡桃を失うことが、どうしようもなく怖い。



胡桃が自ら戦場に立つことを想像するだけで、心臓が凍りつくような感覚に陥る。



だけど──。



あんなに真っ直ぐな拒絶を食らうのは、

正直、キツすぎる。




「あのさ、赤羽くん。守りたいのはわかるけど、鳥籠の中に閉じ込めんのは違くない?」




楪の視線が、ふざけた様子もなく俺を見据えていた。




「……は?何が言いたい」

「いや、別に喧嘩を売ってるわけじゃないよ。たださ……あの子がなんで銃を持ちたいって言ったか、本当にわかってる?」