今度はベンチから立ち上がった楪が、ぽりぽりと頭を掻きながら、ため息混じりに口を開く。
「あーあ。泣かせちゃった。」
その言葉にカッとなって、俺は鋭く睨みつけた。
「……黙れよ」
言葉とは裏腹に、胸の奥はぐちゃぐちゃだった。
……胡桃のあんな顔、初めて見た。
泣かせたかった訳じゃない、あんな顔させたかった訳じゃない。
俺はただ、胡桃を守りたいだけで……。
できる限り、危険なことして欲しくなくて……。
…………いや、でも、…分かってる、これは俺の勝手なエゴだ。
認めざるを得ない。
俺は、胡桃を失うことが、どうしようもなく怖い。
胡桃が自ら戦場に立つことを想像するだけで、心臓が凍りつくような感覚に陥る。
だけど──。
あんなに真っ直ぐな拒絶を食らうのは、
正直、キツすぎる。
「あのさ、赤羽くん。守りたいのはわかるけど、鳥籠の中に閉じ込めんのは違くない?」
楪の視線が、ふざけた様子もなく俺を見据えていた。
「……は?何が言いたい」
「いや、別に喧嘩を売ってるわけじゃないよ。たださ……あの子がなんで銃を持ちたいって言ったか、本当にわかってる?」


