総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





……別に、神代さんは何も特別なことはしていない。

会話の合間にグラスを差し出したり、上層部への紹介の際に軽く頭を下げたり。



それだけのはずだった。

でも、私の目は逃さなかった。



叶兎くんが何か言うたびに神代さんの反応が早いこと、視線がほんの少しだけ長く留まること。

仕事上の連携、と言われればそれまでだ。



でも。

女の勘は当たるんだよ。



神代さんのあの目は…。



「…………」



胃の底がずしりと重くなった。

周囲の華やかな笑い声も、グラスが触れ合う高い音も、すべてが遠い世界の出来事のように聞こえる。



……勝てない。



その思考が浮かんだ瞬間、自分で自分を殴りたくなった。


何に?…能力?美貌?地位?



最近は、吸血鬼の世間からも少しずつ認めてもらいつつあった。

でもそれは「無効化」の能力があるからだ。



………朝宮胡桃という人間を、本当に見てくれている人はいるのだろうか。