一階の更衣室に向かうと、懇親会パーティ用のドレスが置いてあった。
特警側が用意してくれたもので、白を基調とした、清楚でシンプなデザイン。
着替えながら鏡を覗き込むと、案の定、目は真っ赤に腫れていた。
「………最悪」
コンシーラーで誤魔化して、髪を整えて、深呼吸ひとつ。
人気の少ない扉の方からホールに足を踏み入れる。
シャンデリアが天井から幾重にも吊り下がり、磨かれた大理石の床に反射して。
テーブルには料理が並び、タキシードやドレス姿の吸血鬼やハンターたちが交流会をしていた。
私は壁際に身を潜めるようにしてホールの中央付近に目をやると、叶兎くんが上層部の大人たちに囲まれている。
いつも通りの様子で、私のことなんか気にしてないのかな…。
そんな風に思ってしまう自分に嫌気がさす。
でも、この場所には偉い人がたくさんいる。
彼が持ち場を離れるわけにいかないことくらい、私だって分かっているのに。
ふと、叶兎くんのすぐ側に目を移すと、近くに、神代さんが自然な位置で立っていた。
黒のロングドレスに身を包み、照明を受けて輝いている。
姿勢が良く、所作のひとつひとつに無駄がない。


