総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




一階の更衣室に向かうと、懇親会パーティ用のドレスが置いてあった。

特警側が用意してくれたもので、白を基調とした、清楚でシンプなデザイン。


着替えながら鏡を覗き込むと、案の定、目は真っ赤に腫れていた。



「………最悪」



コンシーラーで誤魔化して、髪を整えて、深呼吸ひとつ。


人気の少ない扉の方からホールに足を踏み入れる。



シャンデリアが天井から幾重にも吊り下がり、磨かれた大理石の床に反射して。

テーブルには料理が並び、タキシードやドレス姿の吸血鬼やハンターたちが交流会をしていた。


私は壁際に身を潜めるようにしてホールの中央付近に目をやると、叶兎くんが上層部の大人たちに囲まれている。



いつも通りの様子で、私のことなんか気にしてないのかな…。


そんな風に思ってしまう自分に嫌気がさす。



でも、この場所には偉い人がたくさんいる。


彼が持ち場を離れるわけにいかないことくらい、私だって分かっているのに。




ふと、叶兎くんのすぐ側に目を移すと、近くに、神代さんが自然な位置で立っていた。


黒のロングドレスに身を包み、照明を受けて輝いている。

姿勢が良く、所作のひとつひとつに無駄がない。