叶兎くんは深い溜息を吐き、呆れたように言った。
「……胡桃さ、前に吸血鬼に襲われたこと。俺に報告してないよね。」
「………っ!」
心臓が跳ねた。
っ、やっぱり、知ってたんだ…。
黙ってたこと…怒ってる、よね。
「今回のことだって、俺に言わないつもりだったろ。心配かけたくないのかもしれないけどさ、黙って勝手な事される方が心配」
…図星だった。
何も言い返せない。
「……とにかく、銃は置いて。こんな危ないもの──」
目の前に、有無を言わさない強引さで手が差し出される。
私は、叶兎くんの強引なところも嫌いじゃない。
だけど今は──。
「……」
「胡桃。」
俯いたまま、視界がじわりと滲む。
……こんなところで泣きたくないのに。
「…………叶兎くんにはわかんないよ、人間の私の気持ちなんかっ…!」
差し出された叶兎くんの手を拒絶するように、私は持っていた銃を彼の胸元に押し付ける。
驚きに目を見開く叶兎くんの顔を直視できなくて、私は涙を隠すように身を翻した。


