琥珀は横目で橘さんを見やりながら、面白そうに唇を端を上げた。
「へぇ、スカウト?」
「違う。合理的な提案。」
橘さんは淡々と続ける。
「能力に頼らなくても戦える手段があった方がいいだろ。自分の身を守るためにも。」
「……」
私の中で、何かが大きく揺れた。
「自分も戦えるようになりたい」「守られるだけじゃなくて、隣に立ちたい」──ずっと、心の奥底にくすぶっていた想い。
琥珀はちらっと私の顔を覗き込み、背中を押すように微笑む。
「試しにやってみたら?悪い話じゃないと思うけど。」
「……やってみたい、かも。」
橘さんはわずかに口角を上げ、「こっちだ」と短く言った。
私たちは三人で訓練場の射撃スペースへと移動した。
防音の分厚い扉を抜けると、広いレンジに的がずらりと並んでいる。
橘さんが棚から、小ぶりで扱いやすそうな拳銃を一丁取り出した。
「はい。これは反動が少ないから初心者向き。中身は訓練用のもので実弾じゃないよ。」
おもちゃじゃない。
命を奪うことも守ることもできる、本物の質感を備えた鉄の塊。
……初めて、自分の意思で武器に触れた。


