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訓練が終わり、参加者たちがそれぞれの控室へと帰っていく。
演習場は少しずつ静まり返っていくはずなのに、会場の空気はさっきまでとは明らかに違う、奇妙なざわめきに支配されていた。
叶兎くんはハンター側の幹部たちと何やら難しい顔で話し込んでいて、天音くんも特警の関連で呼び出しを食らっている。
なので私は一人、琥珀と一緒に廊下を歩いていたけど、すれ違うハンターたちの視線がさっきまでとは明らかに質が違うことに気づいて、思わず身を縮めた。
恐怖や敵意じゃない。
もっとこう、品定めするような……剥き出しの「興味」
……な、なんか、みんなしてこっち見てる……。
廊下を歩くだけで何度も振り返られ、ハンターたちがひそひそと囁き合っている声が嫌でも耳に飛び込んでくる。
「無効化」という私の力の異質さを、あの模擬戦で目の当たりにした衝撃が、波紋のように広がっているみたいだった。
「……あの子でしょ、朝宮の。能力無効化ってマジだったんだ。」
「麗音さんの氷止めてたよな。あれ洒落にならないって。」
「ハンター側に欲しい人材だろ普通に。」
噂は火のように広まっていた。
「触れただけで能力を消す」「麗音を止めた」「吸血鬼の契約者」──断片的な情報が一人歩きして、尾ひれがついていく。
「……すごい人気者じゃん。記念にサインでも書く?」
琥珀が自販機で買った飲み物を二本抱えて戻ってくると、片方を何気ない顔で差し出してきた。
「……冗談やめてよ。なんかジロジロ見られて落ち着かない……」
「そりゃそうでしょ。『元トップ』の攻撃を真っ向から防いだんだよ? 注目されない方がおかしいって」
琥珀の声はあくまで軽かったけど、その目は鋭く周囲を観察していた。
ハンターの数人が、あからさまに私の動線を追っている。


