「……できた……っ!」
「胡桃!?」
麗音の手も止まっていて、目を見開いている。
「……そうか。お前の能力、こういう形でも出るのか。」
静止した氷がばきんと音を立てて砕け散った。破片が降り注ぐ前に霧のように霧散していく。
だが、感傷に浸る暇はなかった。
「感心してる場合じゃないぞ。」
麗音が再び手を振った。今度は三方向同時。雪と氷と吹雪が同時に襲いかかる。
「右!」
叶兎くんが麗音のいる位置とは反対に叫んだ。その先には神代さんがいて。
「右」という一言だけで意図を完璧に汲み取った彼女は、叶兎くんとは逆方向から同時に踏み込んだ。
二人の動きは、まるではめ込まれた歯車のように噛み合っている。
叶兎くんが前衛で氷を打ち砕き、その死角を神代さんが瞬時に埋め、麗音の次の一手を先読みして動く。
「……」
綺麗だった。悔しいくらいに。
あの二人の間に、他の誰かが入り込む余地なんて、どこにもないみたいで。
叶兎くんと神代さんは、麗音をどんどん「対象」の台座近くまで追い詰めていく。
その度に吹雪の威力が弱まっていくのを感じるけど、私の心には暗い影が落ちた。
私は無効化の力で、この吹雪の中に立っていられる。でも、それだけだ。
実際に戦って道を切り拓いているのは、叶兎くんと神代さん。
……自分はただ、ここに立っているだけ。
その時、後ろから駆けてきた天音くんの声が響いた。


