総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「……っ誰……?」



身構える私たちの前に、非常灯の赤い光に照らされて、一人の女性が姿を現した。


神代さんだ。

いつもと変わらない冷徹な眼差しで、彼女は静かにそこに立っていた。


琥珀が迷わず銃口を神代さんへ向け、低く、警戒を解かずに問いかける。



「 ……ひとり?仲間は。」



神代さんは答えない。代わりに一歩踏み出した。



というか、今琥珀は「ひとり」って言ったけど…。

私の目には、神代さんの後ろにはBチームが全員普通に立っている。


…待って……どういうこと?

神代さんが、二人いる……?


戸惑う私の視界の端で、蓮水さんがふわりと片手を伸ばしているのが見えた。

そこでハッとする。


蓮水さんの能力は「幻覚」。

そして、神代さんが二人いるように見えるのは、…私の予想が当たっていれば、九条くんの「変装」能力だ。


つまり、みんなに見えている目の前の神代さんは、九条くんが変身している偽物。

本物の神代さんは、蓮水さんの幻覚に紛れて、別の場所に隠れている…。



私自身に直接作用する能力──天音くんの「魅了」や朔の「洗脳」、蓮水さんの「幻覚」は、私の「無効化」が自動的に撥ね退けてくれる。

だから私には、蓮水さんの術にかけられている皆には見えない「真実」が見えているんだ。

逆に九条くんの変装のような自己強化型の能力は、私が意識して無効化しにいかない限り、そのまま見えてしまう。