利用だなんて、そんなこと…。
言い返そうとして、去年の出来事が脳裏をよぎる。
不本意な形だったとはいえ、私は一度天音くんに攫われた。
……信じていた人に、裏切られたこともある。
「前にも言ったけどさぁ。俺、胡桃が心配なの、本気で。」
すっと伸びてきた細い指が、風で乱れた私の前髪を優しく払った。
あまりに自然で、柔らかな手つき。
「純混血だからって理由だけじゃないよ?1人の女の子として」
声のトーンが半音落ちた。
甘く、低く。
まるでお菓子で誘い出すような。
ドクン、と心臓が大きな音を立てる。
不意打ちだった。
いつも不敵に笑っている琥珀が、こんな、今にも消えてしまいそうな脆い顔をするなんて。
「……こは──」
「…俺の言ってる意味、わかる?」
わ、分かるわけがない。
「…って、分かんないよねー。胡桃、鈍感だもんね」
琥珀の指が、私の頬にそっと触れる。
ゆっくりと近づいてきて──。


