総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ



利用だなんて、そんなこと…。


言い返そうとして、去年の出来事が脳裏をよぎる。

不本意な形だったとはいえ、私は一度天音くんに攫われた。

……信じていた人に、裏切られたこともある。



「前にも言ったけどさぁ。俺、胡桃が心配なの、本気で。」



すっと伸びてきた細い指が、風で乱れた私の前髪を優しく払った。

あまりに自然で、柔らかな手つき。



「純混血だからって理由だけじゃないよ?1人の女の子として」



声のトーンが半音落ちた。

甘く、低く。

まるでお菓子で誘い出すような。


ドクン、と心臓が大きな音を立てる。


不意打ちだった。

いつも不敵に笑っている琥珀が、こんな、今にも消えてしまいそうな脆い顔をするなんて。



「……こは──」

「…俺の言ってる意味、わかる?」



わ、分かるわけがない。



「…って、分かんないよねー。胡桃、鈍感だもんね」



琥珀の指が、私の頬にそっと触れる。

ゆっくりと近づいてきて──。