総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




……確かに1年前のあの騒動の時、天音くんは私に好きと言ってくれた。


だけど私は叶兎くんが好きで、天音くんもそれをわかった上で、今でも友達として接してくれている。

けど、それももうだいぶ前のことだし…。



「そうだよ。見てればわかる」



琥珀はフェンスの金網にもたれかかり、訓練場の方をぼんやり眺めていた。

その表情はどこか寂しげで、同時にひどく冷めている。



「……恋人いるの、知っててあの距離感でしょ?」

「…………まぁ、天音くん、最初からずっとあんな感じだから…」



琥珀はふぅん、と小さく息を吐いた。



「じゃあ、俺もいい?俺も最初から、この距離感だし」



そう言って、琥珀は一歩、私の方へ踏み出してきた。


天音くんのように顔を近づけるのではない。

ただ、物理的な距離を半歩縮めただけ。


それだけなのに私はなぜか、息が詰まった。



「胡桃は吸血鬼に甘すぎ。利用されるかもとか、考えないわけ?」