……確かに1年前のあの騒動の時、天音くんは私に好きと言ってくれた。
だけど私は叶兎くんが好きで、天音くんもそれをわかった上で、今でも友達として接してくれている。
けど、それももうだいぶ前のことだし…。
「そうだよ。見てればわかる」
琥珀はフェンスの金網にもたれかかり、訓練場の方をぼんやり眺めていた。
その表情はどこか寂しげで、同時にひどく冷めている。
「……恋人いるの、知っててあの距離感でしょ?」
「…………まぁ、天音くん、最初からずっとあんな感じだから…」
琥珀はふぅん、と小さく息を吐いた。
「じゃあ、俺もいい?俺も最初から、この距離感だし」
そう言って、琥珀は一歩、私の方へ踏み出してきた。
天音くんのように顔を近づけるのではない。
ただ、物理的な距離を半歩縮めただけ。
それだけなのに私はなぜか、息が詰まった。
「胡桃は吸血鬼に甘すぎ。利用されるかもとか、考えないわけ?」


