そのまま叶兎くんは隣に腰を下ろした。
ぽすっと頭に自分の頭を預けてきて。
「……ちょっと、貸して」
しばらくして、隣から規則正しい寝息が聞こえてくる。
……え、寝てる?
恐る恐る横を見ると、焦茶色の髪がさらりと頬にかかっていた。
赤い瞳は閉じられ、呼吸は穏やかで深い。
「……叶兎くん?」
返事はなくて。
相当疲れていたらしい。
会議に加えて移動時間、ほぼ丸一日動きっぱなしだったのだろう。
……こんな無防備な顔、久しぶりに見たかも。
いつもは鋭い目元も、薄く引き結ばれた唇も、今は全部ゆるんでいる。
私は起こさないようにそっと体を傾けて、叶兎くんの頭を自分の膝の上に乗せた。
「……お疲れさま。」
誰にも聞かれない小さな声で呟く。
窓の外では、夕陽が街を橙色に染め始めていた。


